空爆されたテルアビブの国際空港の動画? 生成AIによるもの 【ファクトチェック】

イスラエルのテルアビブにあるベングリオン国際空港が空爆を受けた様子として動画が拡散しましたが、誤りです。動画はAIで生成されたものです。
検証対象
イスラエルとイランの軍事紛争の中で、2025年6月15日、イスラエルの空港が空爆の被害を受けたという動画が拡散した。「これはAIではなく、本物のテルアビブ空港です。Grokで確認できます」という説明も付けられている。

2025年6月19日現在、この投稿は449件以上リポストされ、表示回数は134万回を超える。投稿について「イラン強い」「マジか」というコメントの一方で「これはAI動画では?」という指摘もある。
検証過程
2025年6月13日未明にイスラエルがイランの首都テヘランなどを攻撃、14日にはイランがミサイルなどで報復した。双方の攻撃はその後も続き、緊迫した状況が続いている。
テルアビブとベングリオン国際空港
テルアビブはイスラエル中部の大都市で経済の中心。拡散した動画で言及されている「テルアビブ空港」は、テルアビブにあるベングリオン国際空港を指していると思われる。
拡散した動画にある空港のターミナルビルは直線で、少なくとも6本のボーディング・ブリッジ(ターミナルビルから飛行機に乗客乗員を乗降させるための設備)が横並びになっている。
ターミナルビルの形状が異なる
実際のベングリオン国際空港をGoogleマップで確認すると、ターミナルビルは円形で、ボーディング・ブリッジは放射状に伸びている。動画のようにボーディング・ブリッジが横並びになっているターミナルビルは存在しない。

高層ビル群が隣接していない
また、近隣の様子をGoogleマップで確認すると、動画に写っているような高層ビル群は空港近くに存在しない。

突然現れる照明

拡散した動画では13秒時点で、画像左側(赤丸付近)の照明が突然現れる。これはAI生成の動画によくある特徴の1つだ。
2025年5月27日には動画が存在
Googleレンズで動画を検索すると、拡散した動画と同じ内容が、Instagramに投稿されているのが見つかる。
しかし、この動画の投稿は、イランによる攻撃より20日ほど前の2025年5月27日だ。また、動画には「#南レバノン」と書かれている。南レバノンとベングリオン国際空港は約500キロほど離れている。
2025年6月19日現在、投稿したアカウントは、今回の投稿以外にも、過去に崩壊した建物を空撮のような画角で撮影したような動画を多数投稿していることが確認できる。映っている乗り物が途中で消えるような映像が多く、AI生成の可能性が高い。
判定
拡散した動画はテルアビブ空港だと主張しているが、テルアビブにあるベングリオン国際空港とは、空港の構造や周囲の建物の特徴が一致しない。また、拡散した投稿は、イランによる今回の攻撃より前に投稿されている上、AI生成の特徴を含んでいる。よって誤りと判定した。
あとがき
Xの生成AI「Grok」をファクトチェックに利用するユーザーが増えています。しかし、Grokによる情報には間違いが多いことが繰り返し指摘されています。
日本ファクトチェックセンターでも、そのことを指摘する記事を書いています。生成AIを活用した検証は、参考にはなりますが、十分に頼れるものではありません。自分自身でも確認したり、信頼性の高い情報源を確認したりしましょう。

検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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